FXとは
FX(Foreign Exchangeの略)とは、異なる国の通貨を交換してその為替差益を狙う取引のことです。証拠金(保証金)をFX会社に預け、レバレッジという仕組みを利用することで、手持ち資金より大きな金額の通貨を売買できます。株式とは異なり、通貨ペアごとの為替レート変動を利用して、安く買って高く売る、または高く売って安く買い戻すことで利益を目指します。基本的な仕組みを押さえれば、少額からでも始められる身近な金融取引です。
取引の基本概念
まず、FX取引に欠かせない代表的な基本用語を解説します。通貨の組み合わせや価格の見方、取引単位や費用など、押さえておきたいポイントが多くあります。
通貨ペア(Currency Pair)とは、2つの異なる通貨の組み合わせのことです。例として「USD/JPY(ドル/円)」であれば米ドルと日本円のペアを指し、「1ドル=何円」という為替レートで表現されます。
**為替レート(Exchange Rate)**とは、通貨ペアの交換比率を示す価格です。例えば「USD/JPY = 150.00」の場合、1米ドルと引き換えに150円が必要という意味になります。為替レートの変動によってFXの利益・損失が生じます。
円高・円安とは、日本円の価値が他通貨に対して**上がっている状態(円高)か下がっている状態(円安)**を指します。たとえば「1ドル=150円から140円に下がる」のは円高(円の価値上昇)、「140円から150円に上がる」のは円安(円の価値下落)です。
Ask(アスク)/Bid(ビッド)とは、それぞれ通貨ペアの買値と売値のことです。アスクは市場でこちらが買うときの価格、ビッドはこちらが売るときの価格を示します(※FX会社が提示するレートで、常にBid<Askとなります)。
**スプレッド(Spread)**とは、売値(Bid)と買値(Ask)の価格差のことです。これは実質的な取引コスト(手数料のようなもの)で、スプレッドが狭いほど低コストで取引できます。例えばUSD/JPYのスプレッドが「0.2銭」であれば、取引を開始した時点で約0.2銭分のコストがかかっているイメージになります。
ロット(Lot)とは、FX取引における取引数量の単位です。通常1ロットは100,000通貨を指します(※証券会社や口座種類によっては1ロット=1万通貨等の場合もあります)。例えば0.1ロットは1万通貨、0.01ロットは1,000通貨となります。
ピップス(pips)とは、為替レートの最小変動単位のことです。主要通貨ペアでは小数点以下4桁目(日本円絡みなら小数点以下2桁目)が1ピップスにあたります。例えばUSD/JPYが150.00から150.05へ動いた場合、5ピップスの変動となります。
**レバレッジ(Leverage)**とは、少ない証拠金で大きな金額の取引を行う仕組みです。てこの原理にたとえられ、たとえばレバレッジ10倍なら手元資金10万円で100万円相当の通貨を売買できます。ただし利益だけでなく損失も比例して大きくなるため、適切なリスク管理が必要です(日本の個人向けFX口座ではレバレッジ最大25倍までと規制されています)。
証拠金(Margin)とは、FX取引を行うために口座に預け入れる担保資金のことです。取引を開始するには所定の証拠金が必要で、保有ポジションの価値に応じた必要証拠金を維持する必要があります。証拠金はレバレッジを利かせた取引の担保となり、損失が出た場合はここから差し引かれます。
スワップポイント(Swap Point)とは、通貨間の金利差調整分のことです。通貨ペアの2国間の金利差に基づき、ポジションを日またぎで保有すると発生します。一般に金利の高い通貨を買って低い通貨を売るとプラスのスワップを受け取れ、逆の場合はマイナスのスワップ支払いとなります(※スワップポイントは毎営業日計上されます)。
ポジション(Position)とは、現在保有して決済していない未決済の取引のことです。買いポジション(ロング)または売りポジション(ショート)として保持され、為替レートの変動によって評価損益が刻々と変化します。ポジションを決済(反対売買)すると利益または損失が確定します。
買い(ロング)/売り(ショート)とは、通貨ペアを買う取引と売る取引のことです。FXでは相場の上昇を見込んで安く買って高く売るだけでなく、下落を見込んで先に高く売り(ショート)後で安く買い戻すことで利益を狙うこともできます。たとえば「USD/JPYを今後上がると予想して買い」、「予想どおり上昇したところで売って決済」すれば差額が利益になります。一方、「下がると予想して高い現在価格で売り」、「実際に下落したところで買い戻せば」差額が利益になります。このように買いからも売りからも始められるのがFXの特徴です。
チャート・テクニカル分析用語
為替相場の分析手法にはファンダメンタルズ分析とテクニカル分析があります。特にチャート(価格推移のグラフ)を用いるテクニカル分析に関する代表的な用語を押さえておきましょう。
**ファンダメンタルズ分析(Fundamental Analysis)**とは、経済の基礎的要因に着目した分析手法です。金利動向や経済指標、金融政策や国際情勢などを調査し、通貨の適正価値や今後の方向性を判断しようとします。長期的な相場トレンドを掴むのに役立つ手法です。
テクニカル分析(Technical Analysis)とは、価格チャートの過去データをもとに値動きのパターンや傾向を分析して将来の相場を予測する手法です。チャート上の形状や指標(インジケーター)を用い、売買タイミングを探ります。短期の売買判断に用いられることが多く、ファンダメンタルズ分析と併用されることもあります。
ローソク足(Candlestick Chart)とは、相場の一定期間における始値・終値・高値・安値を一本の棒(ローソク)で示したチャートのことです。ローソク足の実体部分と上下のヒゲによって、その期間中の値動きの情報をひと目で把握できます。ローソク足チャートは世界中のトレーダーに用いられる基本的なチャート形式で、相場のトレンドやパターン認識に非常に便利です。
移動平均線(Moving Average)とは、直近◯日間など一定期間の平均価格を結んで描いたトレンド指標となる曲線です。短期・中期・長期の移動平均線をチャートに表示することで、現在の価格が平均と比べて高いか低いか、上昇トレンドか下降トレンドかなどを視覚的に判断できます。移動平均線の方向やクロス(交差)は売買シグナルとして利用されます。
**トレンドライン(Trend Line)とは、チャート上で相場の一定の方向性(傾向)**を示すために高値同士または安値同士を結んだ直線のことです。上昇トレンドなら安値を切り上げる形で引いたサポートライン(上昇支援線)、下降トレンドなら高値を切り下げる形で引いたレジスタンスライン(下降抵抗線)として機能します。トレンドラインをブレイク(突破)するか否かが、相場転換のサインとして注目されます。
**支持線・抵抗線(Support/Resistance)とは、相場がそれ以上下がりにくい水準を示す支持線(サポートライン)と、それ以上上がりにくい水準を示す抵抗線(レジスタンスライン)**の総称です。過去に何度も反発した安値水準は支持線、高値水準は抵抗線となりやすく、チャート上の重要な価格目安となります。トレーダーは支持線付近では買いエントリー、抵抗線付近では売りエントリーを検討するなど、売買判断に活用します。
RSI(Relative Strength Index)とは、価格の上昇と下降の勢い(強弱)を測る代表的なオシレーター系指標です。直近の値上がり幅と値下がり幅の比率から0〜100の数値で表され、一般的に70%以上で買われすぎ(過熱感)、30%以下で売られすぎを示すと言われます。RSIを参考に相場の行き過ぎを判断し、エントリーや決済のタイミングを計ることができます。
MACD(マックディー, Moving Average Convergence Divergence)とは、2本の移動平均線の収束・発散を見ることでトレンドの転換点を探る指標です。短期と長期の指数平滑移動平均線(EMA)の差分をMACD線とし、そのMACD線の平均をシグナル線としてチャートに描きます。MACD線がシグナル線を上抜けば上昇トレンドへの転換シグナル、下抜けば下降トレンドへの転換シグナルと判断されることが多いです。トレンド系とオシレーター系の特徴を併せ持ち、中期的な売買判断に用いられます。
注文方法用語
FXでは注文の出し方にいくつか種類があり、用途に応じて使い分けます。主な注文方法や関連用語を整理しましょう。
成行注文(マーケット注文)とは、現在の市場価格で即時に約定(売買成立)させる注文方法です。価格を指定せず、その時点で提示されている最良のレートで売買します。すぐに取引を成立させたいときに用いられ、約定スピードが優先されます。
**指値注文(Limit Order)**とは、現在の価格より有利な価格を指定して出す予約注文です。買いの場合は現在より低い価格、売りの場合は現在より高い価格をそれぞれ指定し、注文価格に到達したら自動的に約定します。「安く買いたい/高く売りたい」ときに活用する注文方法です。
**逆指値注文(Stop Order)**とは、現在の価格より不利な価格を指定して出す予約注文です。買いの場合は現在より高い価格、売りの場合は現在より低い価格を指定し、その価格まで動いたら自動的に約定します。相場がブレイクアウト(上抜け・下抜け)したときに追随してエントリーしたり、損失限定のストップロス注文(逆指値の売り注文)として使われます。
**OCO注文(オーシーオー, One Cancels the Other)**とは、2つの注文を同時に出し、一方が成立したらもう一方を自動キャンセルする注文です。利益確定用と損切り用など2方向の注文をあらかじめセットで出しておき、どちらか条件を満たした方だけ約定させることができます。レンジ相場からの上下どちらかへの離脱時に備える場合などに有用です。
**IFD注文(イフダン, If Done)**とは、新規注文と決済注文をセットで出す方法です。まず新規の指値注文(または逆指値注文)を出し、もし(If)新規注文が成立したら、その建玉に対する決済注文(Done)が自動で発注されます。一度の指示でエントリーからエグジットまで完結できる便利な注文方法です。
**IFO注文(イフダンOCO)**とは、IFD注文とOCO注文を組み合わせた複合注文です。新規の指値(または逆指値)注文と同時に、そのポジションの決済用として利益確定注文と損切り注文の2つを発注します。新規注文が成立すると2つの決済注文(OCO)が有効化され、片方が約定すればもう片方はキャンセルされます。相場から目を離している間でも、あらかじめ利確・損切りを自動執行できる便利な注文方法です。
**トレール注文(トレーリングストップ)**とは、相場の変動に追随して逆指値(ストップ)価格を自動修正していく注文方法です。あらかじめトレール幅(追随幅)を設定しておくと、相場が有利な方向に動いた際にストップ価格も同じ幅だけ自動で切り上げ(または切り下げ)られます。トレンドが続く限り利益を伸ばしつつ、相場が反転した際には利益を確保して決済することができます。
スリッページ(Slippage)とは、発注時の指定レートと実際の約定レートがずれる現象のことです。市場の急変動や流動性低下により、成行注文や逆指値注文が出された瞬間にレートが飛んでしまうと、意図した価格より不利な価格で約定する場合があります。これを防ぐために許容スリッページの設定(何銭までのズレを許容するか指定)などの仕組みも用意されています。
リスク管理用語
FXで長く安定して取引を続けるには、リスク管理の知識も重要です。損失を最小限に抑えるための仕組みや指標について確認しましょう。
**損切り(カットロス)とは、含み損を抱えたポジションをこれ以上損失が膨らむ前に手仕舞うこと(決済すること)**です。あらかじめ損失許容範囲を決めておき、そのラインに達したら躊躇せず損切りするのが健全なトレードには欠かせません。損切りのルールを設けておくことで、致命的なダメージを防ぎトータルでの資金管理を安定させます。
ロスカット(強制ロスカット)とは、一定以上の損失が発生した際にFX会社によってポジションが自動決済される仕組みです。証拠金維持率が定められた水準を下回ると強制ロスカットが執行され、残っているポジションが強制的に決済されます。これはそれ以上の損失拡大を防ぐ安全装置ですが、ロスカットになると証拠金の大半を失う結果となるため、そうならないよう早めの損切りや適切なレバレッジ設定でリスク管理をすることが重要です。
追証(追加証拠金, Margin Call)とは、評価損の拡大によって口座の有効証拠金が必要水準を下回った際に求められる追加の証拠金のことです。簡単に言えば「このままでは証拠金不足なので、足りなくなる前に資金を追加してください」という警告です。追証が発生した場合、指定の期限までに不足分の資金を入金しないとポジションが強制決済される場合があります。国内業者では追証制度を採用していることが多いため、口座残高には常に余裕を持たせておくことが望ましいでしょう。
**ボラティリティ(Volatility)とは、相場価格の変動の大きさ(変動率)**を表す用語です。ボラティリティが高い相場では短期間で価格が大きく上下に動き、ハイリスク・ハイリターンの状況になります。逆にボラティリティが低い相場では値動きが穏やかで、大きな利益も損失も出にくくなります。自分のリスク許容度に応じて、ボラティリティの高低にも注意しながら取引通貨ペアやタイミングを選ぶことがポイントです。
リスクヘッジ(Hedging)とは、将来起こり得る損失のリスクに備えて事前に対策を講じることです。具体的には、値動きが逆相関の資産に分散投資したり、既存ポジションと逆方向の取引を行ったりしてリスクを相殺します。FXでは片方の通貨ペアで損失が出ても他のポジションの利益でカバーするなどの手法が考えられます。ただし個人トレーダーが複雑なヘッジ取引を行うのは難しい場合も多いので、基本は一つ一つのポジションで適切に損切りを設定することが最大のリスクヘッジとなります。
トレードスタイルの用語
最後に、FXトレーダーが取る代表的な取引スタイルの名称を紹介します。取引期間や売買頻度の違いによって、以下のような呼び方があります。
スキャルピングとは、数秒〜数分といった超短期で小さな利ザヤを狙う取引スタイルです。1日に何十回も売買を繰り返すこともあり、瞬発的な判断力が求められます。わずかな値動きでも利益にできますが、その反面スピード重視で高度な熟練を要する手法です。
デイトレードとは、1日のうちに売買を完結させる短期取引スタイルです。日中の値動きを狙ってポジションを持ち、原則としてその日のうちに決済します(翌日にポジションを持ち越さない)。スキャルピングよりは取引回数が少なくなりますが、相場を一日中チェックする必要があるため時間的な拘束は大きくなります。
スイングトレードとは、数日から数週間程度の期間でポジションを保有する中期取引スタイルです。日々の細かい変動よりも大きな値動き(スイング)を捉えて利益を狙います。経済指標やニュースによる相場変動も考慮しつつ、適度にポジションを保有するため、仕事をしながらでも比較的取り組みやすいスタイルと言えます。
ポジショントレード(長期トレード)とは、数ヶ月から年単位にわたってポジションを保有する長期投資スタイルです。為替レートの長期的なトレンドや各国の金利差(スワップポイント狙い)を重視し、多少の短期変動は気にせず大きな流れに沿ってポジションを維持します。ファンダメンタルズ分析を重視した戦略で、時間をかけて利益を狙います。
以上、FXの基本用語を幅広く解説しました。ここで挙げた用語は初心者がまず押さえておきたい重要なキーワードです。最初は専門用語の多さに戸惑うかもしれませんが、一つ一つ意味を理解していけばFXの仕組みがクリアになります。ぜひ本記事を参考に、用語の意味を確認しながら実際の取引経験を積んでいってください。慣れてくるにつれ、市場ニュースやチャート分析もスムーズに理解できるようになるでしょう。FXの基本をしっかり身につけて、安心・安全な取引デビューを目指しましょう!
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