1. はじめに:MT4とMT5、あなたに合うのはどっち?
外国為替証拠金取引(FX)を行う上で、取引プラットフォームの選択はトレーダーの成功を左右する重要な要素です。その中でも、MetaQuotes Software Corp.が開発したMetaTrader 4(MT4)とMetaTrader 5(MT5)は、世界中のトレーダーから圧倒的な支持を得ている二大プラットフォームです 。
MT5はMT4の後継バージョンとしてリリースされ、多くの点で機能強化が図られています 。しかし、依然としてMT4も根強い人気を保っており、多くのトレーダーに利用され続けています。
「MT5の方が新しいから優れているのでは?」「なぜ未だにMT4が人気なの?」といった疑問を持つ方も少なくないでしょう。本記事では、FX取引プラットフォーム選びで迷っている方のために、MT4とMT5の主な違いを機能、性能、互換性など様々な角度から徹底的に比較・解説します。それぞれのメリット・デメリットを理解し、ご自身の取引スタイルや目的に最適なプラットフォームを見つけるための一助となれば幸いです。MT5が技術的に多くの面で進化している一方で、MT4が特定の理由で依然として高い人気を誇る背景にも迫ります。
2. なぜ違いを知ることが重要なのか?
MT4とMT5、どちらのプラットフォームを選ぶかは、単なる好みの問題ではありません。選択したプラットフォームは、日々の取引効率、利用できる分析ツールの種類、自動売買(EA)の活用可能性、そして全体的なトレーダーとしての体験に直接的な影響を与えます。
例えば、注文管理方式の違い(ヘッジングかネッティングか)は、特定の取引戦略の実行可否に関わります 。また、プログラミング言語の違い(MQL4かMQL5か)は、利用したいカスタムインジケーターやEAが使えるかどうかを決定づける重要な要素です 。動作速度の違いは、特にスキャルピングや高頻度取引を行うトレーダーにとっては無視できないポイントとなるでしょう 。
さらに、利用したいFX会社がどちらのプラットフォームを提供しているか、あるいは両方提供している場合でも、口座タイプによって機能(例えばMT5でのヘッジング可否)が異なる可能性も考慮に入れる必要があります 。
これらの違いを正確に理解せずにプラットフォームを選んでしまうと、後々「使いたい機能がなかった」「愛用していたツールが使えない」「取引スタイルに合わない」といった問題に直面し、トレード戦略の実行に支障をきたす可能性があります。したがって、プラットフォーム選択は、自身のトレードを成功に導くための基盤作りであり、その違いを深く理解することが極めて重要なのです。
3. 一目でわかる!MT4とMT5の主な違い【比較表】
MT4とMT5の主要な違いを理解するために、まずは以下の比較表をご覧ください。各項目の詳細については、後続のセクションで詳しく解説します。
MT4 vs MT5 主要機能比較
機能 (Feature) | MT4 | MT5 |
---|---|---|
システムアーキテクチャ (System Architecture) | 32-bit | 64-bit |
動作速度 (Operating Speed) | 標準/重い場合あり | 高速 |
プログラミング言語 (Programming Language) | MQL4 | MQL5 |
EA/カスタムインジケータ互換性 (EA/Indicator Compatibility) | MQL4のみ, 互換性なし | MQL5のみ, 互換性なし |
注文・ポジション管理 (Order/Position Management) | ヘッジング方式 | ネッティング方式 (ヘッジング可の場合あり) |
時間足の種類 (Number of Timeframes) | 9種類 | 21種類 |
内蔵テクニカル指標数 (Built-in Indicators) | 30種類 | 38種類 |
内蔵描画ツール数 (Built-in Drawing Tools) | 31種類 | 44種類 |
対応金融商品 (Supported Instruments) | 主にFX | FX, 株式, 先物, CFD等 |
板情報 (Depth of Market – DOM) | なし | あり |
経済指標カレンダー (Economic Calendar) | なし | あり |
バックテスト機能 (Backtesting Features) | 基本機能 | 高度化・高速化 |
この表は、MT5が多くの技術的なカテゴリ(速度、時間足、指標、対応商品、バックテスト)で優位性を持っていることを示しています。しかし、最も重要な点として、EAやカスタムインジケーターに関する後方互換性の欠如が挙げられます。この点が、依然としてMT4が広く利用され続ける大きな理由となっています。
4. MT4とMT5、7つの主要な違いを徹底解説
比較表で概要を掴んだところで、特に重要な7つの違いについて、さらに詳しく掘り下げていきましょう。
4.1. 動作速度とパフォーマンス (Speed and Performance)
MT4とMT5の最も顕著な違いの一つが、動作速度とパフォーマンスです。この差は、それぞれのプラットフォームが基づいているシステムアーキテクチャに起因します。MT4は32ビットアプリケーションとして設計されているのに対し、MT5は64ビットアプリケーションとして開発されました 。
現代のパソコンの多くは64ビットアーキテクチャを採用しており、CPUやメモリ(RAM)といったハードウェアリソースをより効率的に活用できます。MT5はこの64ビット環境に最適化されているため、パソコンの性能を最大限に引き出すことが可能です 。その結果、特に複数のチャートを同時に表示したり、複雑な計算を要するカスタムインジケーターやEA(自動売買プログラム)を実行したり、大量の過去データを用いたバックテストを行う際に、MT4と比較して大幅に高速な処理速度を実現します 。
動作が重くなりがちな状況、例えば多くのインジケーターを適用したチャート分析や、高度なEAの運用、詳細なバックテストなどを頻繁に行うトレーダーにとっては、MT5の高速性は大きなメリットとなります。約定スピードや分析の快適性に直結するため、取引チャンスを逃しにくくなるでしょう。
ただし、MT4の動作速度が一般的な手動取引において著しく遅いというわけではありません 。基本的なチャート分析や裁量取引がメインであれば、MT4でも十分に快適な取引が可能です。世界中で依然として多くのトレーダーがMT4を使い続けている現状が、その実用性を物語っています。したがって、パフォーマンスの差が自身の取引スタイルにとってどれほど重要かを評価することが肝心です。
4.2. プログラミング言語 (MQL4 vs MQL5) と互換性 (Programming Language & Compatibility)
MT4とMT5では、カスタムインジケーターやEAを作成するためのプログラミング言語が異なります。MT4ではMQL4(MetaQuotes Language 4)、MT5ではMQL5(MetaQuotes Language 5)が使用されます 。
MQL5はMQL4の後継言語であり、オブジェクト指向プログラミングに対応するなど、より高度で多機能な開発が可能です。機能面ではMQL5が優れていますが、ここで極めて重要な問題があります。それは、MQL4とMQL5の間に互換性がないという点です 。
つまり、MQL4で書かれたEAやカスタムインジケーターはMT5では動作せず、逆にMQL5で書かれたものはMT4では動作しません。これは、MT4からMT5への移行を考える上で最大の障壁の一つとなっています。
MT4には、長年にわたって世界中の開発者によって作成された膨大な数のEAやカスタムインジケーターが存在します。無料・有料問わず、多種多様なツールが蓄積されており、多くのトレーダーがこれらの既存リソースに依存しています 。特定のMQL4製EAやインジケーターを愛用しているトレーダーにとって、それらがMT5で利用できないという事実は、MT5の他の技術的な利点を上回るデメリットとなり得ます。
MQL4のプログラムをMQL5で動作させるためには、コードを書き直す(再プログラミングする)必要があり、これには専門的な知識と時間、場合によってはコストがかかります。MQL5に対応したEAやインジケーターの数も増えつつありますが、MQL4の膨大なライブラリと比較すると、まだその規模は小さいのが現状です 。
この互換性の問題は、技術的な優位性だけではプラットフォームの移行が進まない「エコシステムの固定化(ロックイン)」効果を生み出しており、MT4が依然として高い人気を維持する核心的な理由となっています。プラットフォーム選択においては、自身が利用したい、あるいは将来的に利用する可能性のあるEAやカスタムインジケーターが、どちらの言語で開発されているかを確認することが不可欠です。
4.3. 注文・ポジション管理方式 (ヘッジング vs ネッティング) (Order/Position Management: Hedging vs. Netting)
MT4とMT5では、注文とポジションの管理方法に関する標準的な方式が異なります。
MT4では、ヘッジング方式が採用されています。これは、同一の金融商品(例えば、米ドル/円)に対して、買いポジションと売りポジションを同時に保有できるシステムです 。例えば、米ドル/円の買いポジションを1ロット持っている状態で、新たに売りポジションを1ロット建てると、買い1ロットと売り1ロットの両方のポジションが個別に存在することになります。これは「両建て」とも呼ばれ、特定の戦略(例:相場の方向性が不透明な時に両建てでリスクヘッジを図る)で活用されます。
一方、MT5では標準でネッティング方式が採用されています 。ネッティング方式では、同一金融商品のポジションは合算されます。例えば、米ドル/円の買いポジションを1ロット持っている状態で、さらに買いポジションを1ロット追加すると、合計2ロットの単一の買いポジションとして扱われます。この状態で売り注文を出すと、既存の買いポジションの一部または全部が決済される形になります。つまり、同一商品で反対方向のポジションを同時に持つことは、標準設定ではできません。
ただし、ここで重要な注意点があります。MT5プラットフォーム自体はヘッジングに対応しており、FX会社(ブローカー)が設定を変更することで、MT5でもヘッジング(両建て)が可能になる場合があります 。このような口座は「ヘッジングアカウント」などと呼ばれることがあります。したがって、MT5を利用する場合でも、ヘッジングを行いたいトレーダーは、利用するFX会社がMT5のヘッジング対応口座を提供しているかを確認する必要があります。
この違いは、特に両建てを戦略の一部として組み込んでいるトレーダーにとっては非常に重要です。MT4であれば問題なく両建てが可能ですが、MT5を利用する場合は、必ずしもネッティング方式のみというわけではなく、ブローカーの提供する口座タイプ次第であるという点を理解しておく必要があります。
4.4. 時間足の種類 (Timeframes)
チャート分析において、時間足(タイムフレーム)は相場の動向を異なる時間軸で捉えるための基本的なツールです。MT4とMT5では、利用可能な時間足の種類に大きな差があります。
MT4で標準で利用できる時間足は、以下の9種類です 。
- 1分足 (M1)
- 5分足 (M5)
- 15分足 (M15)
- 30分足 (M30)
- 1時間足 (H1)
- 4時間足 (H4)
- 日足 (D1)
- 週足 (W1)
- 月足 (MN)
これらはFX取引で一般的に用いられる主要な時間足であり、多くのトレーダーにとって十分な選択肢と言えます。
一方、MT5では時間足の種類が大幅に拡充され、以下の21種類が利用可能です 。
- 分足: M1, M2, M3, M4, M5, M6, M10, M12, M15, M20, M30
- 時間足: H1, H2, H3, H4, H6, H8, H12
- 日足: D1
- 週足: W1
- 月足: MN
MT5では、MT4にはなかった2分足、3分足、20分足、2時間足、8時間足といった、より細分化された、あるいは非標準的な時間足が追加されています。
この時間足の豊富さは、特に**マルチタイムフレーム分析(MTF分析)**を行うトレーダーにとって大きな利点となります。MTF分析とは、複数の異なる時間足チャートを同時に分析し、短期的な動きと長期的なトレンドを組み合わせて相場判断の精度を高める手法です。MT5では、より多様な時間軸で相場を観察できるため、分析の自由度と精度が向上し、より詳細なエントリータイミングやトレンド転換の兆候を探ることが可能になります 。特定の非標準的な時間足(例:2時間足)を重視する戦略を用いるトレーダーにとっては、MT5が不可欠となるでしょう。
4.5. 内蔵テクニカル指標と描画ツール (Built-in Indicators & Drawing Tools)
テクニカル分析はFX取引における重要な要素であり、プラットフォームに内蔵されているテクニカル指標や描画ツールの種類と数は、分析の幅に影響します。
MT4とMT5を比較すると、内蔵されているテクニカル指標と描画ツールの数において、MT5がMT4を上回っています。
- 内蔵テクニカル指標数: MT4は約30種類、MT5は約38種類 。
- 内蔵描画ツール数: MT4は約31種類、MT5は約44種類 。
(※一部資料ではMT4、MT5ともに40種類以上と記載されている場合もありますが 、ここではより具体的な数値を提示している資料に基づいています 。)
MT5には、MT4には搭載されていないいくつかの指標やツールが追加されています。これにより、より多様な分析アプローチが可能になります。
しかし、数が多いからといって、必ずしもMT5が圧倒的に有利というわけではありません。移動平均線、MACD、RSI、ボリンジャーバンド、フィボナッチリトレースメント、トレンドラインといった、トレーダーに最も広く利用されている主要なテクニカル指標や描画ツールは、基本的にMT4とMT5の両方に搭載されています。
したがって、多くの標準的なテクニカル分析を行うトレーダーにとっては、MT4のツール群でも十分な場合が多いと考えられます。MT5で追加された特定の指標やツールを必要とするトレーダーにとってはメリットとなりますが、そうでなければ、この差がプラットフォーム選択の決定的な要因になることは少ないかもしれません。むしろ、後述するカスタムインジケーターの互換性の方が、実用上は大きな影響を与える可能性があります。
4.6. その他の機能 (板情報・経済指標カレンダー・対応金融商品) (Other Features: DOM, Calendar, Instruments)
MT5は、MT4にはない、あるいは強化されたいくつかの重要な機能を標準で搭載しています。これらは、MT5が単なるFXプラットフォームではなく、より広範な金融商品を扱うマルチアセットプラットフォームとして設計された思想を反映しています。
- 板情報 (Depth of Market – DOM): MT5には、市場の流動性を価格帯別に表示する「板情報(Depth of Market、DOM)」機能が標準で搭載されています 。これは、特定の価格水準にどれくらいの注文(買い注文と売り注文)が存在するかを視覚的に示し、市場の厚みや潜在的なサポート・レジスタンスレベルを判断するのに役立ちます。特に短期トレーダーや、市場の需給を重視するトレーダーにとって有用なツールです。MT4にはこの機能は標準搭載されていません(一部のブローカーがカスタムツールとして提供する場合はあります)。
- 経済指標カレンダー: MT5プラットフォーム内には、経済指標の発表スケジュールや市場イベントを表示するカレンダー機能が統合されています 。これにより、トレーダーはプラットフォームを離れることなく、取引に影響を与える可能性のある重要なイベント(例:雇用統計、政策金利発表など)を事前に把握し、計画を立てることができます。MT4にはこの機能は標準搭載されておらず、外部のウェブサイトなどで確認する必要がありました。
- 対応金融商品 (Supported Instruments): MT4は元々、主にFX取引を念頭に開発されました 。一方、MT5は当初からFXに加えて、株式、株価指数先物、商品先物、オプション、CFDなど、より多様な金融商品を取引できるマルチアセットプラットフォームとして設計されています 。実際に取引できる商品は利用するFX会社(ブローカー)の提供状況によりますが、プラットフォームの設計思想として、MT5はより幅広い市場へのアクセスを想定しています。将来的にFX以外の資産クラスへの投資も考えているトレーダーにとっては、MT5の方が拡張性の高い選択肢となり得ます。
これらの機能は、MT5が提供する付加価値の一部であり、取引の利便性や分析の幅を広げる可能性を持っています。
4.7. ユーザーインターフェース (User Interface)
プラットフォームの使いやすさ、すなわちユーザーインターフェース(UI)も選択の際に気になる点ですが、MT4とMT5の間で劇的な変化はありません。
基本的な画面構成、チャートの表示方法、注文パネルの配置など、コアとなるインターフェース要素はMT4とMT5で非常に似通っています 。そのため、既にMT4に慣れているユーザーであれば、比較的スムーズにMT5へ移行することが可能です。この類似性は、開発元であるMetaQuotes社が、既存のMT4ユーザーの移行を促すために意図的に維持した側面もあると考えられます。
もちろん、MT5では細かな点で改善が加えられています。例えば、アイコンのデザインが若干モダンになったり、一部のメニュー配置が見直されたり、操作性が向上している部分もあります 。しかし、全体的な操作感としては、MT4からの大きな逸脱はなく、基本的な操作方法を学び直す必要はほとんどありません。
最終的に、どちらのインターフェースが「良い」かは個人の好みによるところも大きいですが、UIの違いがプラットフォーム選択の決定的な理由になることは稀でしょう。他の機能的な違い(互換性、速度、時間足など)の方が、より重要な判断材料となることが一般的です。
5. ユーザーが気になる疑問点を解消
MT4とMT5の違いを調べる中で、多くのユーザーが抱く共通の疑問点について解説します。
5.1. 結局どっちが良いの? (Which is Better?)
これは最もよく聞かれる質問ですが、残念ながら「絶対にこちらが良い」という明確な答えはありません。どちらのプラットフォームが最適かは、トレーダー個々のニーズや優先順位によって異なります。
- 技術的な先進性や機能性を重視する場合: 動作速度、時間足の種類、内蔵ツール、マルチアセット対応、高度なバックテスト機能など、多くの面でMT5がMT4を上回っています 。将来性を見据えるならMT5が有利です。
- 既存のEAやカスタムインジケーターを活用したい場合: MQL4で開発された膨大なツール資産を利用したい、あるいはコミュニティのサポート情報を重視するなら、依然としてMT4が有力な選択肢です 。
最終的な判断は、後述する「選び方のポイント」を参考に、ご自身の状況に合わせて行う必要があります。
5.2. EAやカスタムインジケーターは使える? (EA/Custom Indicator Compatibility?)
繰り返しになりますが、MT4(MQL4)とMT5(MQL5)の間にはEAやカスタムインジケーターの互換性がありません 。MT4用に作られたものはMT5では使えず、その逆も同様です。
もし、あなたが特定のMQL4製のEAやインジケーターに強く依存している場合、それらをMT5で利用するには、MQL5版が存在するか、開発者にMQL5への移植を依頼するか、あるいは代替となるMQL5ツールを探す必要があります。MQL5のツールライブラリも成長していますが、現状ではMQL4の方が圧倒的に選択肢が多いです 。この互換性の問題は、プラットフォーム選択における最も重要な考慮事項の一つです。
5.3. スマホアプリに違いはある? (Mobile App Differences?)
MT4とMT5は、どちらもiOSおよびAndroid向けのスマートフォンアプリを提供しています 。これにより、外出先からでもチャートの確認や取引が可能です。
基本的な取引機能(注文、決済、チャート表示、基本的なインジケーター利用など)は、デスクトップ版の機能を踏襲しており、両アプリで利用できます。UIや一部の高度な機能(例えば、利用可能な時間足の種類など)においては、デスクトップ版のMT4とMT5の違いが反映されている可能性がありますが、基本的なモバイルトレーディング体験としては、どちらも広く利用されています。(提供されている情報源では、MT4とMT5のモバイルアプリ間の詳細な機能比較は限定的です 。)
5.4. デモ口座は? (Demo Accounts?)
はい、MT4またはMT5を提供しているほとんどのFX会社は、両方のプラットフォームでデモ口座を提供しています。デモ口座を利用すれば、仮想資金を使ってリスクなしにプラットフォームの操作性、機能、速度などを実際に試すことができます。
新しいプラットフォームを検討する際には、まずデモ口座で十分に操作に慣れ、自身の取引スタイルに合っているかを確認することが強く推奨されます。
5.5. Macでも使える? (Mac Compatibility?)
MT4とMT5は、元々はWindows向けに開発されたプラットフォームです。しかし、Macユーザーでも利用する方法はあります。
一部のFX会社は、公式にMac版のMT4/MT5を提供しています 。ただし、これらは多くの場合、Wineのような互換性レイヤーを介してWindowsアプリケーションをMac上で動作させる仕組みを採用しています。そのため、ネイティブのWindows版と比較して、動作が不安定になったり、一部機能が制限されたりする可能性があります 。特に、カスタムインジケーターやEAの利用において問題が発生するケースも報告されています。
より安定した環境を求めるMacユーザーは、以下の代替策を検討できます。
- Webトレーダー: 多くのブローカーが提供するブラウザベースの取引プラットフォームを利用する。
- VPS (Virtual Private Server): Windows環境の仮想サーバーをレンタルし、そこにMT4/MT5をインストールしてMacからリモートデスクトップ接続で利用する。これにより、安定した動作環境を確保できます。
- Boot Campや仮想化ソフト: MacにWindows OSをインストールして利用する。
MT5は64ビットOSが必要ですが 、現在のMac OSはこの要件を満たしています。Macで利用を検討する場合は、利用したいFX会社がMac版を提供しているか、そしてその動作安定性に関する情報を確認することが重要です 。
5.6. MT4のサポート終了は本当? (MT4 Support End Rumors?)
MT4のサポート終了に関する噂は長年存在しますが、現状を正確に理解することが重要です。
開発元であるMetaQuotes社は、新規のMT4サーバーライセンスの販売をFX会社(ブローカー)向けに停止しました。これは、同社がブローカーに対してMT5への移行を促していることを示しています。
しかし、既存のMT4プラットフォームを利用しているエンドユーザー(トレーダー)向けのサポートや機能提供を終了するという公式発表は、現時点ではありません。MT4は依然として世界中で非常に多くのトレーダーに利用されており 、多くのブローカーがサービスを提供し続けています。膨大なユーザーベースを抱えるMT4のサポートを突然打ち切ることは、トレーダーやブローカーに大きな混乱をもたらすため、近い将来に完全に利用できなくなる可能性は低いと考えられます。
ただし、MetaQuotes社の今後の開発リソースや新機能の追加は、主にMT5に集中しています 。つまり、MT4は積極的な開発フェーズではなく、主に維持・管理(メンテナンス)フェーズにあると考えるのが妥当です。バグ修正などの基本的なサポートは継続される可能性が高いですが、革新的な新機能がMT4に追加されることは期待できません。
結論として、サポート終了の噂に過度に心配する必要はありませんが、長期的な視点では業界全体がMT5へと移行していく流れにあることは認識しておくべきでしょう。
6. MT4を選ぶメリット・デメリット
これまでの比較を踏まえ、MT4を選択する場合のメリットとデメリットをまとめます。
メリット (Pros):
- 豊富なEA・カスタムインジケーター: 最大のメリットは、長年にわたり蓄積された膨大な数のMQL4製EA(自動売買プログラム)とカスタムインジケーターを利用できる点です。無料・有料問わず、選択肢が非常に豊富です 。
- 情報量とコミュニティ: 利用者数が多いため、使い方やトラブルシューティングに関する情報、コミュニティサポートが充実しています 。初心者でも情報を得やすい環境です。
- ブローカーの選択肢: 歴史が長い分、MT4を提供しているFX会社(ブローカー)が多く、選択肢が豊富です(ただし、近年はMT5のみを提供するブローカーも増えています)。
- 安定性と実績: 長年多くのトレーダーに使われてきた実績があり、安定性には定評があります。
- 標準的な取引には十分: 複雑な自動売買や特殊な分析を行わない限り、基本的な裁量取引には十分な機能を備えています 。
- ヘッジング(両建て)標準対応: 同一通貨ペアでの両建てが標準機能として利用可能です 。
デメリット (Cons):
- 動作速度: 64ビット対応のMT5と比較すると、特に複雑な処理(高度なEA、バックテストなど)を行う場合に動作が遅くなる可能性があります 。
- 機能の制限: 利用可能な時間足(9種類)や内蔵テクニカル指標・描画ツールの数がMT5より少ないです 。
- マルチアセット対応の限界: 主にFX取引向けに設計されており、株式や先物などの他の資産クラスへのネイティブ対応は限定的です 。
- 標準機能の不足: 板情報(DOM)や経済指標カレンダーといった機能が標準搭載されていません 。
- 将来性: 新機能の開発は基本的に終了しており、今後の大幅なアップデートは期待できません 。
7. MT5を選ぶメリット・デメリット
次に、MT5を選択する場合のメリットとデメリットをまとめます。
メリット (Pros):
- 高速なパフォーマンス: 64ビットアーキテクチャにより、最新のPCハードウェア性能を活かし、高速で軽快な動作を実現します 。
- 豊富な時間足: 21種類の時間足を利用でき、より詳細なマルチタイムフレーム分析が可能です 。
- 多くの内蔵ツール: MT4よりも多くのテクニカル指標(38種類)と描画ツール(44種類)が標準搭載されています 。
- マルチアセット対応: FXだけでなく、株式、先物、オプション、CFDなど、多様な金融商品を(ブローカーが提供していれば)一つのプラットフォームで取引できます 。
- 高度な標準機能: 板情報(DOM)や経済指標カレンダーがプラットフォームに統合されています 。
- 進化したバックテスト機能: バックテストの速度が向上し、フォワードテストや詳細な分析レポート(グラフ表示含む)など、より高度なテストと検証が可能です 。
- 将来性: MetaQuotes社による積極的な開発が継続されており、今後の機能追加や改善が期待できます 。
- ヘッジング対応(ブローカー次第): 標準はネッティング方式ですが、ブローカーの設定によりヘッジング(両建て)口座も利用可能です 。
デメリット (Cons):
- MQL4との非互換性: 最大のデメリットは、MQL4で作成された膨大なEAやカスタムインジケーターが利用できない点です 。
- MQL5ツールの少なさ: MQL5対応のEAやインジケーターの数は、MQL4と比較してまだ少ないのが現状です 。
- 情報量の少なさ: MT4と比較すると、日本語での使い方に関する情報やコミュニティサポートがまだ少ない傾向にあります 。
- ブローカーの選択肢: MT4ほど提供しているブローカーが多くない場合があります(ただし、対応ブローカーは増加傾向にあります) 。
- ネッティング方式が標準: ヘッジング(両建て)を行いたい場合は、対応しているブローカーで専用の口座タイプを選択する必要があります 。
8. 失敗しない!あなたに最適なプラットフォーム選びのポイント
MT4とMT5のどちらを選ぶべきか、最終的な判断を下すための具体的なポイントを解説します。以下の点を考慮し、ご自身の状況に最も適したプラットフォームを選択しましょう。
- EA・カスタムインジケーターの利用:
- 既存のMQL4ツールを使いたいか? もし特定のMQL4製EAやインジケーターが取引戦略の核となっている場合、現時点ではMT4を選択するのが最も現実的です 。MQL5版の代替ツールを探すか、自作・移植する手間を許容できるかどうかが鍵となります。
- これから自動売買やカスタムツールを始めるか? 新規に始めるのであれば、より高度な開発が可能で将来性のあるMQL5(MT5)を検討する価値があります。
- 利用するFX会社の対応状況:
- 希望のブローカーはどちらを提供しているか? まず、利用したい、あるいは既に利用しているFX会社がMT4、MT5のどちらを提供しているかを確認しましょう。両方提供している場合もあれば、片方のみの場合もあります 。
- MT5の場合、口座タイプは? MT5を利用する場合、ヘッジング(両建て)をしたいなら、ブローカーがヘッジング対応口座を提供しているかを確認することが必須です 。
- 重視する機能:
- 動作速度やバックテスト性能が最優先か? 複雑なEAの運用や頻繁なバックテストを行うなら、MT5のパフォーマンスが有利です 。
- FX以外の金融商品も取引したいか? 株式や先物など、マルチアセット取引を視野に入れるなら、MT5が適しています 。
- 板情報や経済指標カレンダーが必須か? これらの機能をプラットフォーム内で完結させたいなら、標準搭載しているMT5が便利です 。
- 取引スタイル:
- 裁量取引がメインか? 標準的なインジケーターを用いた裁量取引が中心であれば、MT4でも十分な場合が多いでしょう 。
- スキャルピングや高速取引を行うか? MT5の処理速度が有利に働く可能性があります 。
- 両建て戦略を用いるか? MT4を選ぶか、MT5のヘッジング対応口座を探す必要があります 。
- 将来性:
- プラットフォームの今後の進化を重視するか? MetaQuotes社はMT5の開発に注力しているため、長期的な視点ではMT5の方が新しい機能や改善が期待できます 。
これらのポイントを総合的に評価し、ご自身のトレード環境や目標にとって、どちらのプラットフォームがよりメリットが大きいかを判断してください。単純な優劣ではなく、自身のニーズとの適合性が最も重要です。
9. まとめ:最適な取引環境を見つけよう
MetaTrader 4 (MT4) と MetaTrader 5 (MT5) は、どちらも世界的に広く利用されている高機能なFX取引プラットフォームですが、それぞれに特徴とメリット・デメリットがあります。
MT5は、64ビットアーキテクチャによる高速な動作、豊富な時間足、多くの内蔵分析ツール、マルチアセット対応、高度なバックテスト機能など、技術的な面で多くの進化を遂げています 。将来性という点でも優位性があると言えるでしょう。
一方、MT4は、MQL4で開発された膨大な数のEA(自動売買プログラム)やカスタムインジケーターとの互換性、長年の実績に裏打ちされた安定性、そして豊富な情報量とコミュニティサポートという、依然として強力なアドバンテージを持っています 。
どちらのプラットフォームが「最適」かは、トレーダー一人ひとりの状況によって異なります。既存のMQL4ツールへの依存度、利用するFX会社の提供状況、重視する機能、取引スタイルなどを総合的に考慮して判断することが重要です。
最終的な選択を下す前に、ぜひデモ口座を活用して、両方のプラットフォームを実際に試してみることをお勧めします。操作感やパフォーマンス、利用したい機能などを自分の手で確認することで、より納得のいく選択ができるはずです。
この記事が、あなたにとって最適な取引環境を見つけ、FX取引をより効果的に進めるための一助となれば幸いです。