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FXの確定申告 やり方を初心者向けに徹底解説

FX(外国為替証拠金取引)で利益が出た場合、それは所得税の課税対象となり、多くの場合、確定申告が必要になります 。特にFXを始めたばかりの方にとっては、確定申告の手続きは複雑で分かりにくいと感じるかもしれません 。  

この記事では、「FXの確定申告ってどうやるの?」という疑問をお持ちの初心者の方に向けて、確定申告が必要になるケースから、所得や税金の計算方法、必要書類、申告書の書き方、提出方法、そして損失が出た場合の対処法まで、一連の流れを分かりやすく、ステップバイステップで解説します。

FXの確定申告が必要になるのはどんな時?

まず、どのような場合にFXの確定申告が必要になるのかを確認しましょう。これは、FXでの所得(利益)額だけでなく、あなたの働き方や他の所得の状況によって異なります。

所得の定義 確定申告が必要かどうかを判断する基準となる「所得」とは、FX取引によって年間に得た利益の合計額から、取引にかかった必要経費を差し引いた金額を指します 。具体的には、その年の1月1日から12月31日までに決済した取引の為替差益と受け取ったスワップポイントの合計額から、必要経費を引いたものです 。まだ決済していないポジションの含み益(評価損益)は、その年の課税対象にはなりません 。税金はあくまで 実現した利益 に対してかかるという点を押さえておきましょう。  

確定申告が必要となる主なケース

  • 会社員(給与所得者)の場合
    • FXの年間所得(利益から経費を引いた額)と、他の副業などの所得(給与所得・退職所得を除く)の合計額が20万円を超える場合 。  
    • 年間の給与収入が2,000万円を超える場合(この場合はFXの所得額に関わらず確定申告が必要)。  
    • 給与を2か所以上から受け取っており、年末調整されなかった給与収入と各種所得(FX所得含む)の合計が20万円を超える場合など 。  
  • 被扶養者(専業主婦・主夫、学生など)の場合
    • FXの年間所得と、他の所得(アルバイト収入などを除く)の合計額が48万円を超える場合 。
      • この48万円という金額は、所得税の基礎控除額(2024年現在)に基づいています。合計所得金額が基礎控除額を超えると、所得税が発生するため申告が必要になります。
  • 個人事業主・フリーランスの場合
    • 事業所得など他の所得と合わせて確定申告を行うため、FXで利益が出た場合は基本的に申告が必要です 。  
  • 年金受給者の場合
    • 公的年金等の収入金額が400万円以下で、かつ、FXを含む公的年金等以外の所得金額が20万円以下の場合は、原則として確定申告は不要です 。  

なぜ基準額が違うのか? 会社員等の20万円基準と、被扶養者等の48万円基準の違いは、日本の税金の仕組みに関連しています。会社員の場合、主な給与所得に対する所得税は、会社が年末調整で行ってくれます。そのため、それ以外の副収入については、年間20万円までなら申告手続きを簡略化するという趣旨があります 。一方、被扶養者や個人事業主など年末調整がない方は、所得税の基礎控除(48万円)が主な税負担軽減の枠組みとなります。そのため、合計所得がこの基礎控除額を超えると、自身で確定申告をして納税する必要が出てくるのです 。  

FXの所得と税金の計算方法

確定申告が必要な場合、次に所得金額と納めるべき税額を計算します。

所得金額の計算式 FXの所得金額は以下の式で計算します。

FXの所得金額 = 年間の(為替差益 + スワップポイント) – 必要経費  

為替差益とスワップポイントの合計額は、利用しているFX会社が発行する「年間取引報告書」などで確認できます 。  

FXの確定申告で経費にできるもの

FX取引に関連して支出した費用の一部は、必要経費として利益から差し引くことができます。経費を正しく計上することで、課税対象となる所得金額が減り、結果的に税負担を軽減できます 。  

主な必要経費の例

  • 取引手数料(FX会社によっては無料の場合もあります)  
  • 銀行への振込手数料  
  • FX取引に関するセミナーや勉強会の参加費、交通費  
  • FX関連の書籍、新聞、雑誌などの購入費用  
  • FX取引に利用するソフトウェアや情報ツールの費用  
  • FX取引専用のパソコンやスマートフォンの購入費用(の一部)  
  • インターネット回線やスマートフォンの通信費(FX取引に使用した分)  
  • 自宅で取引する場合の家賃や電気代(FX取引に使用した分)  

家事按分について 自宅の家賃、光熱費、通信費、パソコン購入費など、FX取引と私生活の両方で使用している費用(家事関連費)は、全額を経費にすることはできません。FX取引のために使用した割合を合理的に計算し、その部分だけを経費として計上する「家事按分(かじあんぶん)」という考え方が必要です 。  

按分割合の計算方法に厳密なルールはありませんが、一般的には以下のような基準で計算します。

  • 家賃: 自宅全体の床面積のうち、FX取引に使用しているスペース(書斎など)の面積割合 。  
  • 電気代・通信費: 1週間の総時間のうち、FX取引に使用した時間の割合、またはコンセントの数や使用日数などで按分 。  
  • パソコン購入費: 使用時間の割合などで按分 。  

重要なのは、「FX取引に直接必要であり、かつ、その割合を客観的に説明できる」ことです 。税務署から説明を求められた際に、根拠を持って説明できるように、計算方法やその根拠を記録しておくことが大切です。  

経費計上の注意点 経費として認められるかどうかは、最終的には税務署の判断となります 。計上する際には、必ず領収書やレシート、クレジットカードの明細などの証拠書類を保管しておきましょう 。  

税金の分類と税率 FX(国内の金融商品取引業者を通じて行うもの)の所得は、税法上「雑所得」に分類されますが、その中でも「先物取引に係る雑所得等」という特別なカテゴリーに含まれます 。  

この所得は、給与所得や事業所得など他の所得とは合算せず、**分離して税額を計算する「申告分離課税」**の対象となります 。  

税率は、所得金額の大きさに関わらず**一律20.315%**です 。 内訳は以下の通りです。  

  • 所得税: 15%
  • 復興特別所得税: 0.315%(所得税額の2.1%)
  • 住民税: 5%

申告分離課税であることの利点は、FXで大きな利益が出ても、その利益が他の所得(例えば給与所得)の税率を押し上げることがない点です。逆に、所得が少ない方にとっては、総合課税の低い税率が適用されないという側面もあります。

国内FXと海外FXの税金の違い ここで解説している申告分離課税(一律20.315%)は、日本の金融商品取引法に基づき登録された国内FX業者を利用した場合の扱いです。海外のFX業者を利用して得た利益は、原則として「総合課税」の対象となり、他の所得と合算して累進税率(所得が多いほど税率が高くなる)で課税されるため、税金の計算方法や税負担が大きく異なる場合があります 。海外FXを利用している場合は注意が必要です。  

FXの確定申告に必要な書類

FXの確定申告を行うためには、いくつかの書類を準備する必要があります。漏れがないように、事前に確認しておきましょう。

主要な必要書類

  1. 確定申告書:
    • 第一表・第二表:所得税の申告を行うすべての方が使用する基本様式。
    • 第三表(分離課税用):FXのような分離課税の所得がある場合に必要 。  
    • 入手先:税務署、国税庁ウェブサイト 。  
  2. 先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書:
    • FXの所得金額を計算し、申告書に添付する書類 。  
    • 入手先:国税庁ウェブサイト 。  
  3. 年間取引報告書(または年間損益報告書):
    • 利用しているFX会社が発行する、1年間の取引損益をまとめた書類 。  
    • 計算明細書を作成する上で不可欠な情報源です。
    • 入手先:利用しているFX会社のウェブサイト等からダウンロード 。  
    • 注意:2019年4月以降、確定申告書への添付は原則不要となりましたが、計算の根拠として必ず入手・保管が必要です 。  
  4. 所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用):
    • FXで損失が発生し、その損失を翌年以降に繰り越す(繰越控除)場合にのみ必要 。  
    • 入手先:国税庁ウェブサイト 。  
  5. 給与所得の源泉徴収票:
    • 会社員など給与所得がある場合に必要 。  
    • 入手先:勤務先 。  
  6. 本人確認書類:
    • マイナンバーカード(両面のコピー)
    • または、「マイナンバー通知カード」や「マイナンバー記載の住民票の写し」などの番号確認書類1点 + 「運転免許証」「パスポート」「健康保険証」などの身元確認書類1点 。  
    • 郵送提出の場合はコピーを添付、窓口提出の場合は提示が必要です 。e-Taxの場合は原則不要です。  
  7. 経費の領収書・証明書類:
    • 計上する経費の根拠となる書類。提出は通常不要ですが、税務調査などに備えて7年間(法人の場合は最長10年)の保管義務があります 。  
  8. 印鑑:
    • 申告書に押印が必要な場合があります(e-Taxの場合は不要)。  

必要書類一覧表

書類名主な内容入手先提出要否備考
確定申告書(第一表・第二表・第三表)全体の所得、控除、税額、FX所得(分離課税)の計算税務署、国税庁ウェブサイト必須第三表はFX(分離課税所得)がある場合に必要
先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書FXの収入、経費、所得金額の計算詳細国税庁ウェブサイト必須FXの確定申告には不可欠
年間取引報告書(年間損益報告書)1年間のFX取引の損益合計利用しているFX会社原則不要 (添付義務なし)計算の元となるため入手・保管は必須
所得税の確定申告書付表(繰越損失用)FX損失の繰越控除を申請する場合に損失額等を記載国税庁ウェブサイト損失繰越する場合のみ必須損失発生年と翌年以降も継続して提出
給与所得の源泉徴収票給与収入、所得控除、源泉徴収税額勤務先給与所得がある場合必須 (添付義務なし)申告書作成時の転記元として必要
本人確認書類マイナンバーと身元の確認マイナンバーカード、通知カード、運転免許証等郵送・窓口提出時に必要 (e-Taxは原則不要)マイナンバーカードなら1枚でOK
経費の領収書・証明書類計上する経費の支払い証明各支払先原則不要 (保管義務あり)税務調査等で提示を求められる可能性あり
印鑑申告書への押印各自提出方法による (e-Taxは不要)認印で可

この表は、必要な書類を網羅的に把握するためのチェックリストとして活用できます。特に「年間取引報告書」は、FXの所得計算の出発点となるため、早めに入手しておくことが重要です 。また、各書類は相互に関連しているため、正しい順序で、関連性を理解しながら作成を進めることが求められます 。  

FXの確定申告書の書き方 初心者向けステップ解説

ここでは、FXの確定申告で特に重要となる「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」と「確定申告書 第三表」の書き方のポイントを解説します。年間取引報告書と、給与所得がある場合は源泉徴収票を手元に準備して進めましょう。

計算明細書の記入ポイント

この書類でFXの所得金額を計算します 。  

  1. ヘッダー情報:
    • 上部の「所得の種類」で「雑所得用」を丸で囲みます 。  
    • 氏名欄に氏名を記入します 。  
  2. 取引の内容:
    • 「種類」欄に「外国為替取引」と記入します 。  
    • 「決済の方法」欄に「仕切」と記入します 。これは、先物取引などでポジションを決済することを指す専門用語です。  
    • 年間を通じて同じFX口座で複数回の取引を行っている場合、「決済年月日」と「数量」の欄は空欄で構いません 。  
  3. 総収入金額:
    • FX会社発行の「年間取引報告書(年間損益報告書)」を確認します。
    • 報告書に記載されている年間の為替差損益の合計額を、「差金等決済に係る利益又は損失の額 ①」欄に記入します 。損失の場合はマイナスで記入します。  
    • 年間のスワップポイント損益の合計額を、「その他の収入 ③」欄に記入します 。  
    • ①と③(およびあれば②)の合計額を「計 ④」欄に記入します 。  
  4. 必要経費等:
    • FX取引のためにかかった経費があれば、「その他の経費 ⑦~⑨」欄に費目と金額を記入します 。  
    • 経費の合計額を「計 ⑪」欄に記入します 。  
  5. 所得金額:
    • 「総収入金額 計 ④」から「必要経費等 計 ⑪」を差し引いた金額を、「所得金額 ⑫」欄に記入します 。これがFXの課税対象となる所得金額です。損失の場合はマイナスになります。  

申告書第三表の記入ポイント

計算明細書で算出した所得金額をもとに、分離課税分の税額を計算します 。  

  1. 収入金額・所得金額の転記:
    • 「収入金額」の「先物取引 ト」欄に、計算明細書の「総収入金額 計 ④」の金額を転記します 。  
    • 「所得金額」の「先物取引 76」(様式により番号が異なる場合あり)欄に、計算明細書の「所得金額 ⑫」の金額を転記します 。  
  2. 課税される所得金額の計算:
    • 給与所得など他の所得がある場合は、申告書第一表で計算した所得金額や所得控除額を、第三表の「総合課税の合計額 ⑫」や「所得から差し引かれる金額 ㉙」などに転記します 。  
    • FXの所得金額(上記「所得金額 76」欄の金額)を、「課税される所得金額」の「(76)対応分 84」(様式により番号が異なる場合あり)欄に転記します 。  
  3. 税額の計算:
    • 給与所得など総合課税の所得に対する所得税額を計算し、「税額」の「(77)対応分 87」(様式により番号が異なる場合あり)などに記入します 。  
    • FXの所得に対する所得税額を計算します。「(76)対応分 84」欄の金額に**所得税率15%**を掛けて、「(82)対応分 92」(様式により番号が異なる場合あり)欄に記入します 。  
    • 総合課税分の税額と分離課税(FX)分の税額などを合計し、「(85)から(92)までの合計 95」(様式により番号が異なる場合あり)欄に記入します 。  

税率の内訳について 申告書第三表で主に計算するのは所得税(15%)の部分です。復興特別所得税(0.315%)は、この後、申告書第一表で所得税額全体に対して2.1%を掛けて計算します 。住民税(5%)は、提出された確定申告書の情報をもとに市区町村が計算するため、申告書上で納税者が計算する必要はありません 。  

これらの書類作成は、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用すると、画面の案内に従って入力するだけで自動計算され、転記ミスなども防げるため、初心者の方には特におすすめです 。  

確定申告書の提出方法 選べる3つの選択肢

作成した確定申告書は、期限内(通常、翌年の2月16日から3月15日まで)に税務署へ提出する必要があります 。提出方法は、主に以下の3つから選べます。  

  1. e-Tax(電子申告): インターネット経由で申告データを送信する方法です。
  2. 郵送: 申告書一式を管轄の税務署へ郵送する方法です。
  3. 税務署へ持参: 税務署の窓口に直接提出するか、時間外収受箱へ投函する方法です。

提出方法比較表

提出方法メリットデメリット必要なもの(主なもの)おすすめな人
e-Tax (マイナンバーカード方式)自宅等から24時間提出可能 、添付書類一部省略可 、還付が早い マイナンバーカード、対応スマホ or ICカードリーダライタが必要 、初期設定が必要マイナンバーカード、対応スマホ or ICカードリーダライタ、マイナポータルアプリ 自宅で完結したい方、早く還付を受けたい方、PC・スマホ操作に慣れている方
e-Tax (ID・パスワード方式)自宅等から提出可能、ICカードリーダライタ不要 事前に税務署でID・パスワード発行が必要 、暫定的な方式 税務署で発行されたID・パスワードマイナンバーカード未取得だがe-Taxを利用したい方(早めにマイナンバーカード取得推奨)
郵送税務署に行かなくてよい郵送費用がかかる、提出期限(消印有効)に注意 、送付方法に制限あり(信書便)印刷した申告書一式、封筒、切手(または信書便料金)PC・スマホ操作が苦手な方、日中税務署に行けない方
税務署へ持参不明点を質問できる可能性がある(窓口)、確実に提出できる税務署まで行く手間、混雑の可能性(特に期限間近)印刷した申告書一式初めてで不安な方、直接提出したい方、近隣に税務署がある方

e-Taxでの提出 スマートフォンでも可能

現在、国税庁はe-Taxの利用を推奨しており、最も便利な方法と言えます 。特にマイナンバーカードと対応スマートフォンがあれば、ICカードリーダライタがなくても自宅から簡単に申告できます 。  

e-Tax利用の流れ(マイナンバーカード方式)

  1. 事前準備: マイナンバーカード、マイナンバーカード読取対応のスマートフォン、マイナポータルアプリのインストールが必要です 。  
  2. 確定申告書等作成コーナー: 国税庁の「確定申告書等作成コーナー」にアクセスし、「作成開始」→「e-Taxで提出 マイナンバーカード方式」を選択します 。  
  3. ログイン・書類作成: マイナポータルアプリでマイナンバーカードを読み取りログイン 。画面の案内に従って収入や控除、FXの所得などを入力し、申告書を作成します 。FXの所得入力は「分離課税の所得」→「先物取引に係る雑所得等」から行います 。  
  4. 送信: 作成内容を確認後、再度マイナンバーカードで電子署名を行い、データを送信します 。送信完了画面を必ず確認しましょう 。  

ID・パスワード方式 マイナンバーカードがない場合は、事前に税務署で本人確認の上、IDとパスワードを発行してもらうことでe-Taxが利用できます 。ただし、これは暫定的な措置とされています 。  

郵送や税務署窓口での提出

e-Taxを利用しない場合は、印刷した申告書と添付書類(本人確認書類のコピーなど)を、管轄の税務署へ郵送するか、直接持参します 。郵送の場合は「信書」扱いとなる郵便または信書便を利用する必要があり、宅配便などは使えません 。税務署に持参する場合は、開庁時間外でも「時間外収受箱」への投函が可能です 。  

FXで損失が出た場合の確定申告

FX取引で年間の損益がマイナス(損失)になった場合、所得税の確定申告義務は原則としてありません(他の所得状況によります)。しかし、損失が出た場合でも確定申告をすることには大きなメリットがあります 。  

損失申告のメリット

  1. 損益通算: その年のFXの損失を、他の「先物取引に係る雑所得等」に区分される所得(他の国内FX口座での利益、日経225先物や商品先物、くりっく株365などの利益)と相殺できます 。これにより、他の取引で利益が出ていても、全体の課税所得を減らすことができます。  
  2. 繰越控除: 損益通算してもなお損失が残る場合、その損失を翌年以降最大3年間にわたって繰り越し、将来の「先物取引に係る雑所得等」の利益から差し引くことができます 。  

損益通算 他の利益と相殺する

損益通算を行うことで、例えばA社のFX口座で50万円の利益、B社のFX口座で30万円の損失が出た場合、確定申告で損益を通算し、課税対象となる所得を20万円(50万円 – 30万円)に圧縮できます。

注意点: 損益通算ができるのは、あくまで「先物取引に係る雑所得等」に分類される所得の間のみです 。給与所得や事業所得、不動産所得、さらには同じ雑所得でも暗号資産(仮想通貨)の利益や海外FXの利益などとは損益通算できません 。どの所得と相殺できるのか、その範囲を正しく理解することが重要です。  

繰越控除 損失を最大3年間繰り越す

損益通算の結果、その年の「先物取引に係る雑所得等」全体で損失が出た場合、その損失額を確定申告することで、翌年以降3年間にわたって繰り越すことができます。

繰越控除の手続きと要件

  • 損失発生年の申告: 損失が発生した年に、確定申告書に加えて「所得税の確定申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」を提出し、損失額を申告する必要があります 。  
  • 翌年以降の継続申告: 損失を繰り越している期間中は、毎年必ず確定申告を行う必要があります 。その年にFX取引がなかったり、利益がなかったりした場合でも、繰越控除を継続するためには申告が必要です。  

例えば、2023年に100万円の損失を出し、確定申告(付表提出)したとします。 2024年に30万円の利益が出た場合、確定申告で繰越損失100万円と相殺し、2024年の課税所得は0円になります。残りの損失70万円は2025年以降に繰り越せます。 2025年に50万円の利益が出た場合、繰越損失70万円と相殺し、2025年の課税所得は0円。残りの損失20万円は2026年に繰り越せます。 2026年に50万円の利益が出た場合、繰越損失20万円と相殺し、課税所得は30万円(50万円 – 20万円)となります。

このように、損失が出た場合でも確定申告を行うことで、将来の税負担を軽減できる可能性があります。損失の繰越控除は自動的に適用されるわけではなく、納税者自身が能動的に申告手続きを行うことが必要不可欠です 。  

FX確定申告の注意点とよくある質問

最後に、FXの確定申告に関する注意点や、疑問に思いやすい点をまとめます。

  • 申告・納付期限: 前年1月1日から12月31日までの所得に対する確定申告の期間は、原則として翌年の2月16日から3月15日までです 。納税の期限も原則3月15日となります。  
  • 納税方法: 納付が必要な場合は、以下の方法があります。
    • 口座振替(振替納税): 事前に手続きすれば指定口座から自動引き落とし 。  
    • クレジットカード納付: 国税クレジットカードお支払サイトを利用(手数料がかかります)。  
    • コンビニ納付: QRコードを利用(30万円以下)。  
    • スマホアプリ納付(Pay払い): 国税スマートフォン決済専用サイトを利用(30万円以下)。  
    • ダイレクト納付: e-Taxを通じた電子納税 。  
    • 現金納付: 金融機関または税務署の窓口で納付。
  • 無申告・申告漏れのペナルティ: 確定申告が必要にもかかわらず申告しなかった場合や、所得を少なく申告した場合には、ペナルティとして追徴課税が課される可能性があります。
    • 無申告加算税: 期限までに申告しなかった場合に課され、本来納めるべき税額に対して原則15%~20%(悪質な場合は30%)が加算されます 。ただし、税務署の調査を受ける前に自主的に期限後申告をすれば、5%に軽減されます 。  
    • 延滞税: 納付期限に遅れた日数に応じて課される利息相当の税金です 。  
    • 重加算税: 意図的に所得を隠したり、仮装したりした場合に課される最も重いペナルティで、無申告の場合は40%、過少申告の場合は35%が加算されます 。過去5年以内に無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合は、さらに税率が10%加重されることもあります 。  
    • 刑事罰: 特に悪質な脱税と判断された場合は、刑事罰(懲役や罰金)の対象となる可能性もあります 。  
  • 税務署はFX取引を把握している?: はい、把握している可能性が高いです。FX会社は、顧客の年間の取引損益などを記載した「支払調書」を税務署に提出することが義務付けられています 。税務署はこの情報と提出された確定申告書を照合できるため、無申告や申告漏れは発覚しやすいと考えられます 。マイナンバー制度の導入もあり、個人の所得把握はより容易になっています。「バレないだろう」と安易に考えず、必ず正しく申告しましょう。  
  • 住民税の申告は必要?: 所得税の確定申告(国税)を行えば、その情報は市区町村にも共有されるため、別途、住民税(地方税)の申告を行う必要は通常ありません 。ただし、所得税の確定申告が不要な場合(例:会社員でFX所得が20万円以下)でも、住民税の申告は別途必要になるケースがあります 。お住まいの市区町村にご確認ください。  

まとめ

FXの確定申告は、一見複雑に感じるかもしれませんが、手順を一つずつ理解していけば決して難しいものではありません。

確定申告の基本的な流れ

  1. 申告要否の確認: ご自身の状況(会社員、被扶養者など)とFXの年間所得額から、確定申告が必要かを確認します。
  2. 所得・税額計算: 年間取引報告書をもとに、為替差益とスワップポイントから必要経費を差し引いて所得金額を計算し、税率(20.315%)を掛けて税額を算出します。
  3. 必要書類の準備: 確定申告書、計算明細書、年間取引報告書、源泉徴収票(該当者)、本人確認書類などを揃えます。
  4. 申告書の作成: 計算明細書、申告書第三表、第一表・第二表の順に、計算結果や必要事項を記入します。国税庁の「確定申告書等作成コーナー」の利用が便利です。
  5. 提出: e-Tax、郵送、税務署持参のいずれかの方法で、期限内(原則3月15日まで)に提出します。
  6. 納税: 納付が必要な場合は、期限までに納税します。
  7. 損失の場合: 損失が出た場合でも、損益通算や繰越控除のために確定申告を行うことを検討しましょう。

正確な申告は、追徴課税などのペナルティを避けるためにも非常に重要です。特に経費の計上や家事按分、損失の繰越など、判断に迷う点があれば、税務署の相談窓口や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

この記事が、FXの確定申告への理解を深め、スムーズな手続きの一助となれば幸いです。

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